■「tsubuta SANK!」

広島県尾道市向島町

2022.09竣工

用途：サイクルオアシス・地産地消カフェ

施工：フジカワ工務店

写真：うえのゆり

この「tsubuta SANK」は、広島県尾道市向島の西側海側のしまなみロード沿いにある１件の柑橘倉庫で始まる。既に離農して数年、荒廃し掛けたミカン畑が隣接し、防風林で包まれ光も届かないうっそうとした空き家だったが、しまなみロードに面し、西側に穏やかな瀬戸内海を臨める立地は、この場所最大の環境装置である。この場所性に惚れて東京から移住を決めたクライアントから求められたのは、市場になかなか出にくいＢ級の青果類を２次加工し、出来るだけ地産地消を実現させたカフェとサイクルオアシスとしての機能を、使い込まれた柑橘倉庫で再構築したいというものだった。

既存の建屋の小屋組みはしっかりした存在感を醸しており、限られた予算の中で最大限にこの空間を生かすために、新たに土の質感をもった「カウンター」というBOXを挿入することで、対比的に古い建物を際立たせた。モールテックスで仕上げたカウンターという装置は、テーブルからカウンター、カウンターから荷物置き、荷物置きからベンチへと、高さと角度を変えながら「塊」で繋がっていき、客エリアとサービスエリアを緩やかに仕切りながら、同時に様々な使い方と機能を内包させている。

また、既存の壁の一部を建具化することで、内部と海とのつながりを創り出すことで、海と真逆の方向に開いていた既存の空間を、”海と共に憩う場”としての再編成を試みている。

Photo by うえのゆり